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ベラ・デ・エステナスはDOウティエル・レケーナの主要黒ブドウ品種ボバルで造る熟成タイプのワインを最初に世に出したボデガです。ワインは「カサ・ドン・アンヘル-エステナス・ボバル Casa Don Ángel – Estenas Bobal」。造り手はボデガの現オーナー&醸造家のフェリックス・マルティネス・ロダさんです。
その基礎を作ってきたのは父のフランシスコ・マルティネス・ベルメルさんでした。親族のボデガを長年手伝った後、レケーナに自分のワイナリーを持ったのが1945年、現在の地に移ってきたのは1982年でした。DOウティエル・レケーナを横切って流れるマグロ川に流れ込むエステナス川の川岸にあった、土壌や日照方角が申し分ない畑を持つ「カサ・ドン・アンヘル(アンヘル氏の家という意味)」という名のワイナリーでした。ちなみにエステナス川の川岸はスペイン語で言うとベラ・デ・エステナスなので、それはワイナリーの名前、カサ・ドン・アンヘルは熟成タイプのワインのブランド名として使われています。
フェリックスさんが熟成タイプのワインを造ろうと思い立ったのには理由があります。 父のフランシスコさんは1981年、まだ量り売りのワインが主流だった時代、他社に先駆けてメルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、シャルドネを植え、そのワインをボトリングして発売しました。質は良いものの、これらの国際品種の市場は既に席巻されていました。そこから導かれたのが「ボバルを何とかしないといけない」という結論です。
1990年代、ボバルは樽熟できないと思われていた時代でしたが、独特の個性を持ったボバルならではのワインを造ろうと決心したのです。ちょうどプリオラトが、かつてはあまり評価されていなかったガルナチャとともに再起を果たした頃でもありました。
色を抽出する様々な手法、市販の酵母の数々、低温マセレーション等々、技術的な試みを繰り返す一方、実が最もよく熟する畑の区画を選別していきました。
ワイン造りは醸造の技巧ではなく、ブドウの質の追及へと向かっていきました。その過程で、昔ながらの剪定をした株づくりで、生産量が少ない畑が選抜されていき、最後に残ったのは石灰質で石ころだらけの区画が2つ、ローム粘土質の区画が2つでした。
こうして何年かの試作を経て、1998年ビンテージが初めてボトリングされ、2000年に市場に出ていきました。天候不良や雹の害などで造れない年も何年かありましたが、現在2022年ビンテージまで19のビンテージが発売されています。
昨年はその中から1998、2000、2002、2006、2007、2012、2015、2017、2019、2021の10本が試飲されました。同じ品種、同じ畑、同じ造り手の優れた品質のワインですが、年によってその姿が違うのは、まさに自然の力でしょう。20年以上前のボバルもしっかり個性が際立っていました。「カサ・ドン・アンヘル-エステナス・ボバル」はボバルが素晴らしい熟成ワインを生むブドウであることの証明ともいえるでしょう。